実績

千秋楽を迎えた写真展 ~費用対効果、それと制作者冥利について


こんばんは。たかおこし隊の黒川です。
写真展「多可町の森の人」、25日に千秋楽を迎えました。

しかしこの日、無事に終わったなーと感慨に耽る気持ちにはなれず。なぜかといえば? 撤収予定の翌26日、大雪の予報が出ていたから……

そして当日、はぅ! ごんごんに降りしきる雪ぃッ!



車を加美区方面に走らせると、どんどん雪深くなりまして、まるで東北の映像じゃないか……ラベンダーパーク多可の手前に至っては、運転しながらゾッとしました。

あの傾斜のきつい坂道にですね、ぐわーーーんとですね、対向車線の端まではみ出したタイヤ跡が! 
おいおいめちゃくちゃ滑ってる車があるよ……運転中、アクセルを踏む足が震えたのは初めてでした。
それでも役場の皆さんが応援に来てくれて、パネルや脚の運び出しはあっという間に終了しました。

 

費用対効果

会期中は悪天候の日があったにも関わらず、町内外からお越しくださったお客さまの数、なんと530名以上。
冬場の展示としては好成績だったようで、パークのスタッフさんにも喜んでいただきました。

お客さまは、たかテレビの告知や展覧会のチラシをご覧になった方を始め、業務や取材でお世話になっている方々、県外からのお客さままで多種多様 ―― 

居住地の割合は「多可・西脇」と「他の自治体」で6:4。ぼくが数えた人数で318名:212名ぐらい。こうしたお客さまの居住地から、展覧会の費用対効果を考えてみます。

ひとまず町外のお客様に限って見積もると、お一人が多可町で2000円を使ってくれたとして、212名で「42万4千円」。

ぼくの協力隊の給料は、一ヶ月で16万円くらい。展示準備から終了の3ヶ月で、およそ50万円です。展示用に活動費を20万円ぐらい使ったので(印刷費やフレーム製作費など)、合計した展示費用は「約70万円」になります。この段階で、約30万円の赤字です。

ここには町内の方がラベンダーパーク多可で食事をするなど、展示にお越しくださった過程の出費が含まれていません。

ぼく自身、展覧会の準備・運営と並行して、ほかの業務や取材もしていたので、給与のすべてを展覧会の経費に入れるのも間違い。

北はりまエリアと、それより遠いところからお見えになった方々とでは金額は異なるはず。町外の「お一人2000円を使ってくださった」という見立ても検証が必要です。

プラスの要素を考えると、神戸新聞、朝日新聞に掲載された展覧会の記事には、いくらかの経済・活性化の効果があったでしょうか。

また、年明けから、写真展の町外巡回も計画中。神戸や三宮、大阪など、ふるさと納税の納税者や多可町をセカンドタウンとしてくれそうな方が多いエリアで、認知度アップや関係人口の増加が図れたら、町にとってプラスになりませんか? 

協力隊員として、町内の情報や出来事、取り組みを町外に伝えることも、大事な任務だと思っています。

さらに、そうした情報発信・クリエイティブが、いかに町の収益や集客に効くか ―― ぼくの写真が上手とかチラシが綺麗に作れるとか、個人のPRとは異なる次元でお役に立たないと、活動は成功と言えません。

たとえば、今回の「多可町の森の人」展にしても、展示場所を変えるなら、展示の内容はもとより、チラシや記事の内容を改稿したり、お客様の年齢・行動様式・多可町との関連性を絞ったりして、よりダイレクトに訴求しなければ、漠然とした多可町のイメージを見せるだけで終わって、もったいない。

この辺りの見立てについては同胞・地域商社RAKUが専門です。情報提供や企画の協力、経済効果の正確な見立てを仰ぎながら、多可町の活性化につながる展示・情報発信に質を上げたい。

来年も忙しくなりそうです!

 

制作者冥利に尽きる三ヶ月

さて。こうしたビジネスライクな反省を先にしたのは、そうでもしないと喜びに溢れ、多幸感で破裂しそうだからです。

まずもって、一日に数人……数十人が、ぼくの写真を見に、わざわざ足を運んでくださる! そんなことってあります? あるんですね! 

しかも530名以上も……その、お一人おひとりが、独自の経験や世界観、人生から、感想を伝えてくださる。

「ぶつかり稽古」という言葉が浮かびます。兄弟子の体当たりを得て、眩暈がして、揺さぶりから戻ってまた当たられ、頭のなかまで撹拌された結果のあんこ型。克てる体になっていく。

「写真は素人」とおっしゃるお客さまが、「この写真、ピントが景色全体ではなく、手前の繁みに合っていて、背景がボケ気味なのはどうしてですか?」と核心を突かれたり、「製材中のお姿、よく見ると板の先だけがブレているんですね。狙ったんですか?」と、こちらのこだわりを汲んでくださったり、カメラマンとして刺激を受ける会話がたくさんありました。

さかのぼること取材期間 ―― いま、自分ができる最大をやっても追いつかない現場がいくつもありました。

そのたびに申し訳なくて、モデルさんにごめんなさいすみませんの気持ちになって、次の撮影ではせめて……とトライする中で、タケノコなら上に上に伸びる音が聴こえるような……成長期の子どもだったら筋や骨がぐいぐい伸びる、きしむ音が響くような……そんな感じでですね、カメラマンとしての変身する感覚があったんです。

つられるように写真の仕上げ技術や運営準備ノウハウ、広報・デザイン製作の質も変化。

齢四十を超えて、世界が新しく見えるステージがあるなんて……三ヶ月前の自分にとって、まさか、まさかです。過去、これほどまで、制作者冥利に尽きる体験はありませんでした。

次々と、新たなつながりが生まれる瞬間を間近にできたことも、大きな喜びでした。

たとえば、新しい住環境を求めている方が、多可町の写真に行動のきっかけを得られたり、写真を前にモデルさんの話をしていたら、ご本人がお越しになって、町内に新しい人間関係が生まれたりしたこともありました。

会期中盤には、こんな出来事も ―― 

再会

ある来場者さんが、一枚の写真を見て「あ!」とちいさく叫ばれたんです。僭越ながら、そのわけを伺うと、こんなお話を聞かせてくださいました。
「この写真のモデルさんと、私、幼少期から学生時代まで、ずっと一緒でした。卒業後、私はずいぶん遠いところに越して、今日はたまたま、ラベンダーパーク多可に遊びにきて、まさか、彼の写真と出会うだなんて。何十年も会っていなかったけど、変わらないね……」

思いがけない来場者の告白や数奇な巡り合わせに立ち会うたび、感激がこみ上げ、だからこそ、休む間もなかった準備からの3ヶ月、走り続けられたと思います。人生の何年分にも感じられる濃密な時間でした。

モデルの皆さま、準備・運営にご協力くださった皆さま、会場にお越しくださったお客さま、そしてラベンダーパーク多可のスタッフの皆さん、ありがとうございました。

おかげさまで、ぼくの体は経験と発想・野心でパンパンのあんこ型。寅年に目指すは白マワシの隊員、多可町の活性化に鉄砲、どすこい。

皆さま、よいお年をお迎えください。

 

(2021年12月28日)



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写真展
Microscope vol.1

多可町の森の人

時期:2021年12月4日(土)~26日(日)
会場:ラベンダーパーク多可 研修室
主催・撮影:黒川直樹(兵庫県多可町地域おこし協力隊)

連絡先:InstagramTwitter、アドレス(infoアットkurokomode.com)